そして、この日の宿「星のや京都」へ。嵐山・渡月橋のたもとの桟橋から船に乗って大堰川(おおいがわ)をさかのぼる。しだいに町の喧噪(けんそう)が遠ざかり、気分は平安貴族。爽やかな川風を受けつつ、源氏物語絵巻を彷彿させる風景の中を10分ほど進むと、左手に峡谷に沿うように立つ風雅な宿が見えてくる。スタッフが出迎えに立つ桟橋に降り、ゆるい坂を上って門をくぐると、「水辺の私邸」と称するにふさわしい空間が広がる。山の緑に包まれた古の景観を今にとどめる建物といい、フロント前の池と滝を抱く「水の庭」や、いぶし瓦で川の流れを表現した「奥の庭」といい、くつろぎを絵に描いたよう。リバービューの部屋でゆったり過ごしたり、庭を散策したり、この上なく贅沢な時間の流れが楽しめる。

星のや京都の専用送迎船が発着する下り桟橋。宿の建物は、京都の豪商・角倉了以が邸宅を構えた場所に100年前に建てられた旅館をリノベーションしたものだ。