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 別の祗園の割烹。雛の節句の頃に出た焼き物。筍を枕に立派な鮎の塩焼きが2匹横たわり、傍らには漬け焼きにされた鱧が並ぶ。筍、鮎、そして鱧。本来の旬から言えば、決して居並ぶはずがないのだが。
 俳句でもこれを〈季違い〉といって忌み嫌う。季節を尊ぶ日本料理にあるまじき取り合わせ。料理人の見識が問われる。
 何故こういうことが起きるかと言えば、これを喜ぶ客がいるからで、近年、客と料理人の関係がいびつになってしまった弊害である。
  海の幸以上に〈旬〉を失っているのは野菜や果実。本来は夏野菜だったはずのトマトやキュウリ、ナスは年中使われ、秋や真冬でもイチゴを使ったデザートがメニューに上る。
 一度崩れた〈旬〉は決して元に戻らない。客と料理人の関係が今のまま続けば、〈旬〉が死語となる日もそう遠くないだろう。
 かつて、料理人と客の間には結界とも呼ぶべき垣根があった。そのため、間に入って媒をする、文字通り仲居の存在があったのだが、今や客と料理人の間に垣根は存在せず、じかにキャッチボールをするようになり、割烹などは劇場化するに至った。
 そのこと自体は決して悪いことではなく、料理人と丁々発止のやり取りを交わしながら、旨いものを食べることができれば、客としてはありがたい限り。だが、以前は裏舞台にいた料理人がいきなり表舞台に出てきて、舞い上がってしまうケースも多い。
 
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