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 さらに金沢は京都、松江と並ぶ日本三大菓子処の一つでもある。加賀藩初代の前田利家と2代利長は、千利休に直接弟子入りしたほどの茶人。その後も歴代藩主は、茶の湯と菓子を手厚く保護してきた。現在は、小堀遠州の命名なる「長生殿」(森八)などの銘菓を始め、色美しい砂糖菓子、麩焼煎餅(ふやきせんべい)も人気を集めている。なお、金沢の和菓子は、色が少々濃いのが特徴だ。四季を鮮明に写す色と造形が、食べ手にはっきりとした印象を残す。
 武家社会に端を発する加賀料理や和菓子であるが、今の時代まで輝きを失わないでいられるのは、作り手である職人たちの技と熱意が連綿と続いているからにほかならない。料理人や菓子職人はもちろん、漆器や焼き物の職人、仲買人たち目利き、農家や漁業者など、食を取り巻く職人たちが自らの仕事に誇りを持ち、時代の変化に前向きに取り組みながら職分をまっとうしている。
 時代ごとのパトロン層や金沢の街の人々も、職人を守り育ててきた。素材、文化、そして何よりもこの強い職人気質が金沢食文化の興隆を支えているのだ。

贅沢な台所、近江町市場

 金沢駅から市中心部に向かい15分も歩くと、武蔵ヶ辻交差点につきあたる。その一角を占めるのが、近江町市場。「金沢市民の台所」と称される、約290年の歴史を持つ市場だ。
 7年以上前に近江町市場を訪れたことのある人は、交差点に立つと驚くかもしれない。細い通路沿いに店がひしめき、どこか戦後の風情を残していた市場は2009年に整備され、5階建てのビル「近江町いちば館」に変わったかに見えるからだ。 しかし一歩ビル内に入ると、かつての市場の雰囲気が残されていることに安心する。市場の整備では昔からあった通路をそのまま残し、新たな通りを1本加えただけだという。
(左上)1924(大正13)年創業の忠村水産は、高品質を誇る。市場内に一般向けの小売部とプロ向け業務部(卸)の2店舗がある。
(左下)忠村水産の入荷状況を示すホワイトボード。産地もしっかり表示し、毎日書き替えられる。圧倒的に県産のものが多い。
(右上)以前の市場の雰囲気を残す青果通り口。近江町市場は四方に八つの入り口があり、鮮魚通りなどジャンル別に店が並ぶ。
(右下)生産者に寄り添う北形青果。加賀野菜、県産野菜の品ぞろえが豊富だ。地元の料亭から厚い信頼を得ている。
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