


かしわい・ひさし
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
1952年京都市生まれ。京都市北区で歯科医院を開業する傍ら、京都関連の本や旅行エッセイなどを数多く執筆。2008年に柏木圭一郎の名で作家デビュー。京都を舞台にしたミステリー『名探偵・星井裕の事件簿』シリーズ(双葉文庫)はテレビドラマにもなり好評刊行中。『京都紫野 菓匠の殺人』(小学館文庫)、『おひとり京都の愉しみ』(光文社新書)など著書多数。
では、その料理人たちの関心はどこに向いているかと言えば、多くが食材の送り手である。
カリスマ漁師、カリスマ農家という存在も近頃では珍しいことではない。そしてその食材の担い手に、料理人たちは全幅の信頼を寄せる。
客は料理人を崇め、料理人は食材の作り手を奉る。ならばその作り手は天や神を尊崇するかと言えば、どうもそうではないらしい。
あるテレビ番組に出演していたカリスマ農家。レストランで料理をひと口食べるなり、厨房に入り込んでシェフを怒鳴りつけた。自分が作った野菜の旨みを台無しにする料理だ、と。シェフはひと言も反論できずにいた。
もちろん料理人の努力や、農家の労苦を否としているものではない。その前に、まずは天地の恵みであることに思いをいたしてもらいたい。
食材の作り手も、料理人も、我が我が、ではなく、自然の力があって初めて、料理が出来上がることを改めて自覚して欲しい。そのためにも、「食す」ではなく「食べる」という言葉を使いたいのだ。
食を愉しく語り、書き綴るに忘れてならないのは、誰が、どんな食材を、どういう調理法で作ったか、ではなく、美味しく食べられることを、天に感謝する気持ちなのである。
カリスマ漁師、カリスマ農家という存在も近頃では珍しいことではない。そしてその食材の担い手に、料理人たちは全幅の信頼を寄せる。
客は料理人を崇め、料理人は食材の作り手を奉る。ならばその作り手は天や神を尊崇するかと言えば、どうもそうではないらしい。
あるテレビ番組に出演していたカリスマ農家。レストランで料理をひと口食べるなり、厨房に入り込んでシェフを怒鳴りつけた。自分が作った野菜の旨みを台無しにする料理だ、と。シェフはひと言も反論できずにいた。
もちろん料理人の努力や、農家の労苦を否としているものではない。その前に、まずは天地の恵みであることに思いをいたしてもらいたい。
食材の作り手も、料理人も、我が我が、ではなく、自然の力があって初めて、料理が出来上がることを改めて自覚して欲しい。そのためにも、「食す」ではなく「食べる」という言葉を使いたいのだ。
食を愉しく語り、書き綴るに忘れてならないのは、誰が、どんな食材を、どういう調理法で作ったか、ではなく、美味しく食べられることを、天に感謝する気持ちなのである。