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料理へのこだわりは「一期一会」、この一語に尽きます。

あか坂 帰燕 石塚啓晃

 料理人になったきっかけは「上京志向」。18歳の石塚啓晃は、テレビに映し出されるバブル末期の煌びやかな東京に憧れて、雪深い新潟から銀座・ざくろにやって来た。
「両親がスーパー兼仕出し屋をやっていて、土日祭日もなく働いていたので、子どもの頃は寂しい思いをしました。それで自分は絶対に商売はやらないと決めていたほど。父が食道楽だった影響で、食べることは好きでしたが、料理には興味が持てなかった。ただ、なかなか進路が決まらず、しょうがなく冬休みに店の手伝いをしたんです。海老の皮をむいたりして。その時に、たまたま料理人の叔父が店にいて、『お前、手先が器用だから、板前にならないか? 東京に行くか?』と声をかけてくれました。この『東京』の一言に、料理人はイヤだなんて気持ちは吹き飛びました。東京に行けるなら、仕事は何でもよかったんですよね」
 若さゆえの軽薄……と言えなくもない。しかし石塚は、面接の時に食べたざくろの料理に驚嘆した。「今まで食べた料理は何だったのか」と。その場で就職を決め、料理人人生を歩み出したのである。
(上)鯛の塩焼き
尾頭付きの鯛ほど新年にふさわしいものはない。石塚は、手前に蛤と赤飯を飾り、よりめでたさが感じられる紅白に仕立てた。「この一皿で、正月の祝い膳は完結する」と思えるほど、どっしりとした存在感がある。

(下)おせち料理
手前は、石塚が「関西の料理人の方に教わった」という、関西風に吹き寄せ盛りにしたおせち。生節、昆布巻、海老の艶煮、鰤の照り焼き、合鴨ロースなど。奥は関東風のきちっとした盛り付け。数の子と子持ち若布の西京漬け、蓮根の甘酢漬けと平目の金糸巻きなど。
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