そのキャリアのスタートは、今の姿からは想像もつかないものだった。1946年、イギリスに生まれたポール・スミスは、16歳でノッティンガムの服飾の倉庫で働き始める。その後、アートスクールの学生と親しくなったことがきっかけで、建築やデザイン、ファッション、芸術に親しむようになり、アートスクールの教師で、後に人生のパートナーとなるポーリーン・デニアの励ましを得て、ノッティンガムに1号店をオープンさせた。「ポール・スミスの紳士服」と名づけられたその店は、わずか3m×3mの窓もない空間だったという。ポールは他の仕事で収入を得ながら、週に2日間だけ、この店をオープンしたのだ。展示では、この「ポール・スミス1号店」が、当時のサイズそのままに再現される。 ロンドンのコべントガーデンに位置するポール・スミスのオフィスは、彼が世界中を旅して集めてきたものであふれている。自転車やカメラ、本など、雑多なようで、これら全てがインスピレーションの源なのだ。このオフィスにあるものが、置き場所まで詳細に完全再現された「ポールのオフィス」だ。


(上)ポールの初めてのショールームとなったパリのホテルを再現した「ホテルのベッドルーム」。最初はシャツ6着、上着2着、スーツ2着だけのコレクションだった。©Luke Hayes
(下)ストライプ柄が生み出される手法まで詳細にわたり完全に再現されたポール・スミス社の「デザインスタジオ」。今もまさに同じ空間で新たなコレクションが生み出されていると思うと感慨深い。©Gee Whiz Digital
(下)ストライプ柄が生み出される手法まで詳細にわたり完全に再現されたポール・スミス社の「デザインスタジオ」。今もまさに同じ空間で新たなコレクションが生み出されていると思うと感慨深い。©Gee Whiz Digital