



(左から)ブナ林ではあちこちで水が湧き出て、沢となって流れている。歩いていると水の音が心地良く、夏でも涼しく感じられる。沢の周囲には、シダ類のほかミズ(山菜)やゲンノショウコ(薬草)、ミズヒキといった、人々の生活と縁の深いものが多く生えている。/ブナの葉が落ち、その後、腐葉土となる林床。無数の微生物に分解され、保水力の高い弾力のある土になる。秋が近づいてきた証拠にふかふかの土の上には、山栗やトチの実などが落ちていた。途中、殻斗に包まれたブナの実が落ちているのも見つけた。/遺産登録されている白神山地のブナ原生林(核心地域)を上から望んで。青秋林道終点の登山口から歩いて1時間程度の二ツ森の山頂まで行くと、こうした風景を見ることができる。登山口からすぐの稜線(りょうせん)からは緩衝地域の中を二ツ森へと登っていく。/ブナは森の中で林立しているが、お互いの葉が重ならないように枝を広げて成長していく。森はブナの葉の天井で覆われる。それなのにブナの森がこれだけ明るいのは、落葉広葉樹は葉が薄いため光が透けるからだ。ブナの葉は、縁が波打ち、葉脈のところでくぼんでいるのが特徴だ。
現在、白神山地の約8割がブナに覆われている。ブナの寿命は200年程度といわれるが、生息地の条件
が良ければ300年、400年と生き続ける。白神山地の森では樹齢300年以上のブナの巨木に出合える。それはまさに精霊が宿るかのような圧倒的な存在感を放つ。長年生きていると、ツルアジサイやフジなどの植物に巻きつかれ、幹の途中が締まってウエストのあるブナや、尻のある巨木もあるが、たいていのブナは天に向かってまっすぐに立っている。根は枝の広がりと同じくらい、大地に大きく張り広がる。
ブナは40年~50年で花を咲かせ、実をつける。実は毎年つくわけではなく、年によって豊凶があり、おおよそ5年~7年に1度の割合で豊作になる。木の大きさによって3千から6万個の種子を生産するが、そのほとんどは動物に食され、一部は腐朽し、残ったものだけが発芽する。しかし、ブナの幼樹は成長が遅く、樹木の中ではミズナラやイタヤカエデに押され、多くが光不足や気象害のために数年のうちに枯死してしまう。成長が良くなるのは樹齢25年を過ぎてからで、50年から120年でようやくピークとなる。今では森
の主のような威容を持つブナの巨木も、厳しい生存競争を生き抜いてきた精鋭なのだ。
自然保護や生物多様性保全の目的を考えるとき、地球環境の保全や資源の確保はもちろんだが、人が自然に触れたときに得られる安らぎや幸福感といった精神的な支えとしての側面も、その重要性の中で大きな割合を占める。澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、森で受け継がれてゆく無数の生命を肌で感じることが、人間にとっていかに欠かせないものかを白神山地のブナ林は教えてくれる。
が良ければ300年、400年と生き続ける。白神山地の森では樹齢300年以上のブナの巨木に出合える。それはまさに精霊が宿るかのような圧倒的な存在感を放つ。長年生きていると、ツルアジサイやフジなどの植物に巻きつかれ、幹の途中が締まってウエストのあるブナや、尻のある巨木もあるが、たいていのブナは天に向かってまっすぐに立っている。根は枝の広がりと同じくらい、大地に大きく張り広がる。
ブナは40年~50年で花を咲かせ、実をつける。実は毎年つくわけではなく、年によって豊凶があり、おおよそ5年~7年に1度の割合で豊作になる。木の大きさによって3千から6万個の種子を生産するが、そのほとんどは動物に食され、一部は腐朽し、残ったものだけが発芽する。しかし、ブナの幼樹は成長が遅く、樹木の中ではミズナラやイタヤカエデに押され、多くが光不足や気象害のために数年のうちに枯死してしまう。成長が良くなるのは樹齢25年を過ぎてからで、50年から120年でようやくピークとなる。今では森
の主のような威容を持つブナの巨木も、厳しい生存競争を生き抜いてきた精鋭なのだ。
自然保護や生物多様性保全の目的を考えるとき、地球環境の保全や資源の確保はもちろんだが、人が自然に触れたときに得られる安らぎや幸福感といった精神的な支えとしての側面も、その重要性の中で大きな割合を占める。澄んだ空気を胸一杯に吸い込み、森で受け継がれてゆく無数の生命を肌で感じることが、人間にとっていかに欠かせないものかを白神山地のブナ林は教えてくれる。