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白神山地の秋田県側、八峰町に位置する留山のブナ林にて。ブナとともに、長い歳月をかけてフジが大きく曲がりながら共生していた。白神の森の豊かな自然環境の中で、どちらもたくましく育っている。
太古の森を歩く
白神山地
Photo Masahiro Goda Text Rie Nakajima
秋田県と青森県の県境に広がる白神山地の中核は、約1千万本のブナに覆われた原生林だ。その白神山地が、日本で初めての世界自然遺産に登録されてから今年で20周年。樹齢300年を超すブナの巨木を中心に、絶滅危惧種の植物や貴重な動物たちが連綿と命をつなぎ続ける太古の森を訪れた。
白神山地のブナ林は、約8000年前の縄文時代に誕生したといわれている。以来、人間の影響をほとんど受けずに現在に至る原生林だ。人は古くから森を利用し、共生してきた。そのため、本当の原生林というのは世界的にも貴重であり、だからこそ今から20年前の1993年、白神山地は屋久島とともに日本初の世界自然遺産に登録されている。
 ふんわりと柔らかな土を踏みしめ、ブナ林を歩く。太古の森はさぞうっそうとしていることだろうと思いきや、白神山地の森は明るい。見上げると森全体がブナの葉に覆われているが、そこから無数の木漏れ日が落ちて、地面を照らしている。ブナやカエデなどの落葉広葉樹は葉が薄いので、光が透けて見えるのだ。明るさはまた、森が成熟している証しでもある。森の成り立ちは、まず草地にアカマツやシラカバなど日当たりのいい場所で成長が速い陽樹が育ち、そのために森が暗くなると、今度は暗い場所でも成長できるブナやスギなどの陰樹が育つ。やがて陰樹が中心を担い、森は安定した極相を迎える。極相の森には全体に光が行き届き、地衣類から草本類、低木類、高木類まで多様な植物が育つ。もちろん、多くの微生物や動物もいる。成熟し、豊富な生命を宿す森であるほど、明るいのだ。
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