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金融コラム 田嶋智太郎
2013.10.01
一段の円安への備えは怠れない
 本稿が読者の目に触れる頃には、すでに消費増税判断の最終結果が明らかになっているものと思われる。「予定通り2段階で引き上げる」という結果であれば、ひとまずはホッと胸をなで下ろすことができるものと思われる。
 執筆時に挙げられている複数案のうち「予定通り2段階で引き上げる」を除くすべての案は、法改正を必要とするうんぬんの次元ではなく、国際社会ならびに市場の信認を大きく損なうという点で大いに問題である。一部の有識者が指摘しているように「財政の信認を損なうリスクは大きい」わけであり、結果的には日本の国債が売りたたかれ、長期金利が上昇することにつながる。
 いまだ、なかには「日本国債の外国人保有比率は極めて低いので心配はない」などと悠長な見解を述べる有識者もいるようだが、それは甘い、甘すぎる。まずは、海外の有力格付け会社が競って「日本国債を格下げする可能性」に言及することとなり、それに市場は極めて敏感に反応するはずだ。
 日本の国債先物は、東京証券取引所(東証)のみならずロンドンやシンガポールの市場にも上場しており、各市場において投機筋が一斉に売り(ショート)ポジションを構える可能性もある。もちろん、債券先物市場などよりもずっと高い流動性を有する外国為替市場に目を向ける投資家も多いことと思われる。当然、彼らが自信満々で構えるのは「円売り」のポジションとなろう。
 では、最終的に「予定通り2段階で引き上げる」となった場合はどうか。まず、消費増税は物理的に日本の物価を引き上げ、そのことを通じて日本円の購買力は低下する。日本国内で“ビッグマック"の価格が上がれば、そのぶんだけ購買力平価の均衡水準が円安方向へとシフトするのは当然のことである。
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