
井ノ頭通りを中心に南北に位置する渋谷区大山町。通りの左右には、街路樹が美しく並び、四季の移ろいを感じられる。木々の間から見え隠れする古い洋館に、選ばれし邸宅地の風格がある。

秘められた邸宅地・大山町
Photo Satoru Seki Text Rie Nakajima
渋谷区大山町。かつては人の住まない山深い場所であったこの地は、関東大震災後に、高台である“堅牢さ”が評価され、近代的な“お屋敷町”へと変貌する。
その際、率先して居を構えた名士たちが暮らした大山町には、歴史に裏づけられた誇り高き伝統がある。都心の利便性と洗練、緑の潤い、そして冒しがたい風格をも享受する、秘められた邸宅地である。
その際、率先して居を構えた名士たちが暮らした大山町には、歴史に裏づけられた誇り高き伝統がある。都心の利便性と洗練、緑の潤い、そして冒しがたい風格をも享受する、秘められた邸宅地である。
東京に優れた住宅地は数あれど、この名をその一つに挙げる人は少ないだろう。渋谷区大山町。爽やかな風が抜ける高台にあり、大きな屋敷が並ぶ閑静な町に立てば、ここが確かに近隣の松濤や広尾などにも劣らない、都内一級の住宅地であることが分かる。声高に語られることが少ないのは、代々住み続けるので、離れたがらない家が多いからだ。むしろ、語られないことこそが、この地が至上の価値を持つ邸宅地である証しなのである。