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ふじくら・かつのり
1964年栃木県生まれ。東京水産大学(現・東京海洋大学)修士課程修了。博士(水産学)。海洋研究開発機構 海洋生物多様性研究プログラム深海生態系研究チームチームリーダー。現在、有人潜水調査船「しんかい6500」世界一周深海研究航海プロジェクトQUELLE2013に参加している。
実は1929年、世界で初めて科学的な潜水艇を開発したのも日本だという。海に囲まれた日本は、深海との付き合いも浅くはないのだ。
 「深海で最も極限的な環境は、海底から熱水や化学物質が噴き出している所です。だいたい海洋プレートの境目にあるのですが、4枚のプレートが重なった位置にある日本の周りには、そういう場所がたくさんあります。陸や浅い海では太陽の光を使って植物が生産者となって生態系を支えます。ところが、その付近の生物たちを研究することで、光が全くなくても、メタンなどの化学物質があれば、バクテリアなどが生産者となることが分かりました。つまり化学合成生態系と呼ばれるようになった別の生態系があるんですね。ということは、メタンがあれば生物がいてもおかしくないということ。木星の惑星であるエウロパなどはメタンで覆われていますから、地球以外にも生命がいる可能性が出てきて、実際にそういった研究が進められているようです。また、熱水噴出域の生物の遺伝子情報を調べると、かなり古い系統に属することが分かっています。地球で生命が生まれたのは38億~40億年くらい前ですが、生命が誕生するには安定的にエネルギーが供給されていないといけない。その当時で可能性が高いエネルギー源は水素で、熱水噴出域には水素がたくさんあるのです。このことから、地球の生命の起源が熱水噴出域にあるのではないかとも、一説として考えられています」
 さらに、熱水噴出域の動物たちは、細胞の中にバクテリアを共生させて、養分をもらっている。
 「陸上の植物や動物は、細胞の中にミトコンドリアや葉緑体などの生物を共生させて進化してきました。ということは、深海の化学合成生態系の生物たちは、共生者を取り込む途中段階にあると考えることができ、彼らを知ることで進化のメカニズムを理解できます。生物全体を理解する上で、重要な秘密が深海に隠されているかもしれないのです」
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