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鮎の砂糖菓子
糖類の中でも純度が高く、水に溶けづらいイソマルトを使った。「砂糖の機能がだんだん体にアプローチしていくようになると、それをどうおいしく食べるかが重要になる」ことへの一つの答えがこのお菓子にある。
Summer Sensation-鮎の記憶
ESqUISSE 成田一世
「25匹目の鮎でぇ~す!」
 声を弾ませて撮影現場に入った成田一世が、ドン!とテーブルに置いた鮎菓子にどよめきが起こった。今にも息を吹き返して川に飛び込み、急流に乗って優雅に泳ぎ出すんじゃないか……黄金色に輝くこの鮎菓子は、本気でそう思ってしまうほどの迫力で、鮎が本来有する美しさと気品はさもありなんと感じられる。
 「すごく苦労しました、鮎をお菓子にって言われた瞬間から。自分の中にそんな発想が全くなかったので、まず味で鮎にするか、姿で鮎にするかで悩みましたね。でも今回は姿でいこうと。日本的な文化の中に、テーブルの涼しげな装いとして、鮎の形をしたゼリーとか落らく雁がんを飾るようなことをしますよね? そういったスタイルをフレンチで表現するのも面白いと思ったんです」
 パティシエの芸術性というか、料理でアートを創造する素養や技術は、フランスを始めとするヨーロッパでは非常に重視される。成田も「こういうあめ細工のような仕事もしていた」とか。その意味でも今回の鮎の菓子は、普段の成田には見られない才能が発揮された“作品"として、興味深いものがある。
 「本物の鮎を見ながら、必死に作りました。ただ木や金属、ガラスなどの壊れない素材で模型を作るようにはいきません。砂糖細工は時間を掛ければフォルムも色も全てパーフェクトに仕上がるものじゃあない。雨が降っただけでベタベタになって、作れなくなる世界。でも逆に、すぐに壊れてしまうことに意味がある。はかなさを見つめ、時間との戦いの中で精巧な仕事をするからこそ、このお菓子を楽しんでいただけるはずだと。それって、はかなさに美を感じる日本的情緒――日本人が初夏にしか味わえない鮎のおいしさを愛してやまない心情にもつながるんじゃないでしょうか」
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