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未来へ向かう英国スタイル
Text Ogawa Fumio
英国では伝統と革新のせめぎ合いから生まれるエネルギーが、先へと進む力になる。このせめぎ合いの中では強い確信を持つものだけが生き残り、これまで継承されてきたものと融合していく。そして新しい文化が築き上げられるのだ。
「セントポール大聖堂は、繊細で、知的で、軽快だが、建造された当時は、全く違った受け止められ方をしただろう。ザ・シャードはセントポール寺院とは全く違うが、しかしこれはこれで、現代的な表現としてありなのだと思っている」
 2012年6月、ロンドンブリッジ地区に建造されたザ・シャードについて、建築設計を手掛けたイタリア人、レンゾ・ピアノの言葉である。数々の現代的名作を手掛けてきた巨匠ピアノは、英国「ザ・ガーディアン」のウェブサイトでのインタビューで、この高さ308mに及ぶ「うろこ」というニックネームを持った建物が、1710年完成のセントポール大聖堂の近くにあって、その歴史的美観を損ねているという批判について、自説を述べている。
 ピアノは、ザ・シャードのデザインが「あっという間にロンドンの一部になると確信している」と語る。古いものは美化され、新しいものはけなされる傾向にあるのは世の常である。しかしそうやって世代交代が進んでいくものなのだ、とピアノは言いたいのだろう。
 恐らくそのピアノの確信こそが、ロンドンの、ひいては英国の魅力なのではないだろうか。
 ファッションもしかり。今日の男性スーツは、19世紀初頭にロンドンの社交界で人気者だったジョージ・ブライアン・ブランメルのテイストが基礎になっているとも言われる。しかし当時、ブランメルの着こなしは、派手でこれ見よがしで自己主張が強く、「奇矯」のそしりを受けていたようだ。
 しかしそれを彼は押し通し、人々が認めたため、その後の服飾に大きな変化をもたらした。
 伝統と革新のせめぎ合いから、エネルギーが生まれてくる。文化的な代表例は、読者の方もよくご存じ、先頃『007 スカイフォール』が大ヒットした、ジェームズ・ボンドかもしれない。
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