PAGE...1|2|3|4
(左)鶴岡市内に残る重要文化財「丙申堂(へいしんどう)」は、かつての豪商であった風間家の住宅として、1896(明治29)年に建築されたもの。その当時、庄内地方で一般的だった杉皮ぶき石置き屋根を20年に1度ふき替えており、往時の風情をそのままに残す。藤沢周平の小説が原作の映画『蟬しぐれ』(黒土三男監督)では、主人公・文四郎とふくが再会した宿として使われた。
(右)広い田園風景が広がるオープンセットの農村エリア。一年かけて造ったという棚田もあり、田畑には実際に作物が植えられている。既に稲刈りが終わった田には、米どころである庄内平野独特の稲の干し方を再現している。点在する農家は中が見学でき、昔の農具などが置いてある。
“庄内映画”誕生のヒミツ
さて、この「庄内映画村」誕生のバックボーンには鶴岡市出身の文豪、藤沢周平の小説世界が大きな関わりを持つ。まず前史として2002年に公開された、山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』を紹介しよう。原作は藤沢周平の短編小説。ヒロイン役の宮沢りえと、真田広之扮する清兵衛の子供たちが祭りに出かけるシーンは鶴岡市内、湯田川温泉の由豆佐売神社で撮影され、その際、郷土芸能の“湯田川神楽"が作中に盛り込まれたのだ。また全編を通して、心に染みる庄内の景観、藤沢文学の芯にある――庄内人ならではの気風も描かれ、地元民は誇りを新たにした。
 2004年、山田監督は続いて藤沢周平の原作に挑み『隠し剣 鬼の爪』を庄内で映画化したが、世に藤沢周平ブームが巻き起こる前から『蟬しぐれ』を撮ろうとしていたのが黒土三男監督だ。ついに念願が実現した2005年、撮影用に造ったオープンセットを「残したい」と考え、模索する男がいた。東京でIT企業の社長を務める宇生雅明氏である。宇生氏は黒土監督の知り合いで、『蟬しぐれ』映画化のためにさまざまな形で尽力し、鶴岡を駆け回り、そうした中で協力、支援を惜しまない地元民の熱意を感じて、こう決断した。「オープンセットを再利用し映画を作っていくシステムが整えば、セットは存続させられる」。かくして2006年、宇生氏が発足させたのが「庄内映画村株式会社」である。

●庄内映画村オープンセット
山形県鶴岡市羽黒町川代字東増川山102 TEL0235-62-2134 www.s-eigamura.jp
PAGE...1|2|3|4
LINK
CULTURE
鶴岡の伝統野菜が旨い
>>2019.2.28 update
CULTURE
春、空と大地と
>>2019.3.4 update
TRAVEL
蓼科・小津安二郎の散歩道
>>2013.10.3 update
CULTURE
ロレックスが結んだ二人の映画人の快挙
>>2015.3.25 update
STYLE
不可思議な羊の正体 Vol.4
>>2013.12.16 update

記事カテゴリー