


(上)日本橋二丁目地区に店を構える日本橋髙島屋の本館と、昨年の秋にオープンしたばかりの新館。「東洋趣味を基調とする現代建築」という設計案により建造された本館は、重厚な西欧様式。この百貨店建築初の重要文化財となった本館に調和するように建てられたのが、新館である。(左)日本橋のにぎわいを再生する商業ビル、コレド室町。街区に面した通りは、暖簾(のれん)や行燈(あんどん)をモチーフにした外装デザインに。老舗や名店が軒を連ね、町歩きの楽しさを演出している。また、コレド室町1とコレド室町2の間(仲通り)は、11:00~20:00の間車両通行止めにして、歩行者に配慮した都市空間づくりを実践する。(右)日本橋の真ん中には、青銅の彫刻「麒麟(きりん)像」が堂々たる風格でたたずんでいる。この麒麟像は現在の日本橋ができるのと同時に誕生した。作者は、彫刻家の渡辺長男(おさお)。日本近代彫刻の父と呼ばれた朝倉文夫の実兄で、明治天皇騎馬像など、人物彫刻を数多く手がけた。ちなみに、日本橋の入り口にある獅子像も、渡辺の作品だ。
一口に日本橋といっても、実は日本橋室町のように「日本橋」とつく地名が21もある。中でも、日本橋の神髄といえるエリアが、現在の日本橋、日本橋室町だ。特に、都市再生特別地区内の指定を受けた日本橋室町東地区は、日本橋三越本店、三井本館といった歴史的建造物との調和を図りながら、日本橋らしい風情を残す、美しい景観をつくっている。具体的には、コレド室町や日本橋室町野村ビル、日本橋三井タワーなどの建物は、中央通りに面するファサードを、三井本館や日本橋三越本店にも見られる歴史的表情線(高さ100尺、31m)を尊重した連続的な美観を意識したデザインとしている。また、ファサードの素材や色彩も、自然石や重厚感があるものを選び、周囲の歴史的建造物と調和するような細やかな工夫がなされている。この歴史的な建築と現代的な建築の程よい共存が日本橋の粋を感じさせるのであろう。