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なお、今回の紛争によって東京市場であらためて評価が高まっているのは、一つに「防衛関連銘柄」であり、今一つに「サイバーセキュリティー関連銘柄」である。防衛関連の方は、あくまで一時的な物色にとどまる可能性もあるが、サイバーセキュリティー関連の方は、ある程度息の長い相場となる可能性があると見る。既に知られているように、トヨタ自動車と取引のある部品会社がサイバー攻撃に遭ったことにより、国内企業のサイバー攻撃に対する脆弱性が再認識され、今後あらためて対応の強化に乗り出す企業が増加することも期待される。
 一方、今回の有事によってドルの調達需要が高まったことも見逃せない。そうでなくとも、足元の米国景気はコロナ禍の一服も手伝って拡大傾向を強めており、そこに有事に伴う商品価格上昇が加わったことで、米国内のインフレ高進がさらに勢いを増す可能性も高まっている。
 むろん、有事の際には円も買われやすいのだが、今回は資源・エネルギーや穀物類などの価格が急上昇していることによって、日本の貿易赤字体質が定着する可能性も高まっており、それだけ円安方向になびきやすくなっているとも言える。実際、今年1月の貿易収支は2.1兆円の赤字と、6カ月連続で赤字が続いた。
 結果、基本的にはドル高・円安の傾向が続くと考えられ、ドル/円についてもじっくり押し目買いのチャンスを狙いたいと考える。
(左)THIS MONTH RECOMMEND・リアルから遊離した世界が好まれる時代へ
副題は「ネット上の『もう一つの世界』」。そこは「自分にとって都合のいい快適な世界」であると著者は説く。むろん、近頃のメタバースの急速な勃興について、その技術的な背景やビジネスの可能性に迫る部分にも触れてはいるのだが、より現実的には「リアルな世の中が生きにくくなっている」ことが大きいのだと気付かされる。リアルからの遊離は悪という価値観は否定せずとも、今後メタバースに“移住”するケースは確実に増えると心得ておきたい。
『メタバースとは何か』 岡嶋裕史/光文社新書/902円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.
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