④自分の海外移住後にご自身が死亡して相続が発生する
上記②ケースで将来にご自身が死亡して相続が発生した場合の税金です。シンガポールや香港等に移住するという話を聞いたことがあるかもしれません。あなたがシンガポール移住後10年を経過してから、あなた自身の死亡による相続が発生、相続人はその時点で国際結婚等で海外に居住してから10年を経過していれば、相続税は日本の財産のみにかかります。次に、あなたの海外移住後10年経過の条件はそのままですが、お子さんが日本国籍を放棄して外国籍を取得している場合は相続人の10年海外居住要件がなくなり、お子さんが海外に居住していれば日本財産のみが相続税の対象となります。二つのケース共にあなたとお子さんの海外居住地が同じ国である必要はありません。
贈与も相続と同じ扱いなので、冒頭に挙げたシンガポールや香港等へ家族そろって移住して10年経過後に国外財産を贈与しても贈与税は課されません。10年海外居住要件は嘗て5年でしたが、上記のごとき動きが一部富裕層の間に見られたことから10年に延長された経緯があります。
⑤子供夫婦が日本居住中に子供の配偶者の親が配偶者に送金
より具体的な例でご説明しましょう。あなたのご子息は英国籍の女性と結婚しました。結婚後、英国居住の父親から通常必要と認められる生活費の範囲を超える現金が娘に送金されてきました。英国人父親から日本在住の娘への送金なので日本の税金がかかる余地はないとお考えかもしれませんが、このケースは義理の娘さんの日本居住年数と日本で取得しているビザの種類によって扱いが異なります。
海外居住の外国籍の人からの送金で受贈者が外国籍の場合には、受贈者が入管法別表第一に列挙する在留資格を保持していて、かつ、贈与を受けた時点から過去15年の間に日本に居住していた期間の合計が10年以下であれば送金額に贈与税はかかりません。ただし受贈者が保有する本人名義の海外の銀行口座で受け取らねばなりません。
逆にいうと入管法別表第一の在留資格でなく、あるいは受贈日以前の15年間に10年以上日本に居住していると贈与税がかかってしまうのです。ここにいう入管法別表第一に列挙する在留資格とは投資、貿易、法律、会計、医療、教育、文化活動などに対して与えられるビザです。具体例で挙げた国際結婚のケースでは、ビザの種類は「日本人の配偶者」ビザが一般的であり、これは別表二にあたるため、別表一の条件から外れて期間条件の判定を待たずに日本の贈与税がかかります。
本稿のまとめ
☑海外からの送金はケースごとに詳細な分析が必要。
☑日本の相続税制は今後も海外税制の動向を見ながら改正の可能性が高い。

永峰 潤(ながみね・じゅん)
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
nagamine-mishima.jp
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
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