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生前信託
 アメリカでプロベート回避手段として用いられる信託は撤回可能生前信託(the revocableinter vivos trust)と呼ばれるものである。この信託は生前に自分を受託者として財産を信託するもので(declaration of trust)、撤回可能としておけば信託組成後も取り消しが可能なため、遺言とほぼ同様の効果が得られるが、プロベートがいらないため重宝されている。

 アメリカの信託にはもう一つの切り口として遺言信託(testamentary trust)というものがあるが、これは文字通り遺言によって組成される信託であるためプロベートを避けることはできない。

 撤回可能信託を自らの保有する不動産に利用することは可能であり、受益者を委託者以外の者(例えば子供)としなければ、信託組成によっても日本の贈与税がかかることはないが、この制度は本来色々な財産をまとめて信託することで、それらを一元的にプロベートから回避できることが最大のメリットであるため、例えば日本人が海外に保有する資産は不動産だけであり、それをプロベートから回避したいということが目的であるならば、あえてそのために信託を設定するメリットはあまりないかもしれない。また銀行預金に関して一定額以下はプロベートがいらないケースもある(州ごとに扱いが違う)。

 この他のプロベート回避手段としては生命保険や年金がある。以上を踏まえて、日本人がアメリカに銀行預金や不動産を保有する場合、コストと手間を考えてプロベートを避ける手段を選ぶとすると、POD,TOD、TODD(不動産の場合で、Transfer-ondeathdeedという)が現実的選択肢と言えるだろう。

本稿のまとめ
☑有価証券についてはTODにすればプロベートを回避できる。
☑生前信託はアメリカではポピュラーなプロベート回避手段として用いられている。
永峰 潤(ながみね・じゅん)
東京大学卒業後、ウォートン・スクールMBA。監査法人トーマツ、バンカーズ・トラスト銀行等を経て、現在は永峰・三島コンサルティング代表パートナー。
nagamine-mishima.jp
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