
永峰 潤(ながみね・じゅん)
東京大学文学部西洋史学科卒。ウォートン・スクールMBA、等松・青木監査法人、バンカーズ・トラスト銀行を経て、現在永峰・三島コンサルティング代表パートナー。nagamine-mishima.jp
(※1)正確には、死亡によって開始する(民法882条)。(※2)『民法IV(補訂版)』内田貴 p323 東京大学出版会。(※3)わが国の場合、相続人間の遺産分割協議が不調に終わり裁判所に持ち込まれる場合等を除いて分割協議から税金申告まで(不動産登記は除く)一切の相続手続を税理士が行うことが多い。これら専門家を使わず自分で完成することも問題ない。(※4)公的な立場をはなれた一個人のこと(広辞苑)。(※5)相続に関する国際私法の考え方には相続統一主義と相続分割主義があるが、ここでは立ち入らず、いずれ機会があれば説明する。(※6)相続は、被相続人の本国法による(通則法36条)。(※7)相続人が複数いる場合に法律の規定に基づいて定めた、各共同相続人が相続財産を承継する割合のこと。(※8)各国がおのおのの国際私法に関する法律を設定しているため、わが国の通則法と外国の国際私法が抵触する場合がある。
東京大学文学部西洋史学科卒。ウォートン・スクールMBA、等松・青木監査法人、バンカーズ・トラスト銀行を経て、現在永峰・三島コンサルティング代表パートナー。nagamine-mishima.jp
(※1)正確には、死亡によって開始する(民法882条)。(※2)『民法IV(補訂版)』内田貴 p323 東京大学出版会。(※3)わが国の場合、相続人間の遺産分割協議が不調に終わり裁判所に持ち込まれる場合等を除いて分割協議から税金申告まで(不動産登記は除く)一切の相続手続を税理士が行うことが多い。これら専門家を使わず自分で完成することも問題ない。(※4)公的な立場をはなれた一個人のこと(広辞苑)。(※5)相続に関する国際私法の考え方には相続統一主義と相続分割主義があるが、ここでは立ち入らず、いずれ機会があれば説明する。(※6)相続は、被相続人の本国法による(通則法36条)。(※7)相続人が複数いる場合に法律の規定に基づいて定めた、各共同相続人が相続財産を承継する割合のこと。(※8)各国がおのおのの国際私法に関する法律を設定しているため、わが国の通則法と外国の国際私法が抵触する場合がある。
これに対して、当事者や相続財産の所在に外国の要素が入ってきた場合を国際的私法関係と呼び、そこでは日本の民法を無条件に用いることはできず、関係する外国の私法を適用すべきか検討しなければならない。各国の私法は自らの歴史、文化、倫理、価値基準等を規範としてそれぞれのルールを制定しており、それらは当然、日本の私法と同じではない。このように各国の私法が異なる場合にどの国の私法を用いるべきかを決する法律として、わが国では「法の適用に関する通則法」を制定している。いわば外国とわが国の私法の交通整理を担っている法律である(※5)。具体例でみてみよう。
外国人夫・日本人妻と子供が一人の家族で、遺言書を残さずに外国人夫が逝ってしまった場合、相続人の範囲と分配割合はどちらの国の民法を適用すべきだろうか。この場合は外国人の本国法を用いて計算することになる(※6)。このケースでは、日本民法の規定に服するのであれば、その法定遺産分割割合(※7)は配偶者50%:子供50%となるが、例えば外国人が韓国籍だった場合、韓国民法が規定する法定遺産分割割合により配偶者60%:子供40%となる。
このように相続人と法定相続分を定める法律は私法であり、外国が関係する場合にどちらの私法を適用すべきかという国際私法関係について、わが国は法の適用に関する通則法に沿って処理することになる(※8)。
では、このような適用すべき私法が外国法のケースに関して、公法である相続税法はどういう対応をとっているのか。このことについては次回に説明したい。
本稿のまとめ
☑相続には民法と税法、二つの法律が関わっている。
☑民法は相続人とその分配割合を、税法は各相続人の相続税を規定している。
☑相続に外国の要素が加わると国内の法律だけで解決することはできない。
外国人夫・日本人妻と子供が一人の家族で、遺言書を残さずに外国人夫が逝ってしまった場合、相続人の範囲と分配割合はどちらの国の民法を適用すべきだろうか。この場合は外国人の本国法を用いて計算することになる(※6)。このケースでは、日本民法の規定に服するのであれば、その法定遺産分割割合(※7)は配偶者50%:子供50%となるが、例えば外国人が韓国籍だった場合、韓国民法が規定する法定遺産分割割合により配偶者60%:子供40%となる。
このように相続人と法定相続分を定める法律は私法であり、外国が関係する場合にどちらの私法を適用すべきかという国際私法関係について、わが国は法の適用に関する通則法に沿って処理することになる(※8)。
では、このような適用すべき私法が外国法のケースに関して、公法である相続税法はどういう対応をとっているのか。このことについては次回に説明したい。
本稿のまとめ
☑相続には民法と税法、二つの法律が関わっている。
☑民法は相続人とその分配割合を、税法は各相続人の相続税を規定している。
☑相続に外国の要素が加わると国内の法律だけで解決することはできない。