そもそも、市場でリスク回避ムードが強まると「安全資産」と目される円に資金が向かいやすくなるという見方は正しいのだろうか。たしかに、アベノミクス以前の日本は世界で唯一、デフレーション(デフレ)に陥っていた国であったから、円の購買力に対する評価が円高を正当化していたとも言える。なにしろ、デフレ下においてはモノよりもカネの価値の方が高いのである。
しかし、今はアベノミクスの成果もあってデフレは徐々に克服されつつある。まして、近年は日本以外の国々にも物価の低下圧力がかかっており、その傾向はもともとデフレだった日本よりも他国の方が強めになっている。つまり、他の国々の通貨の方が円よりも購買力を強める傾向にあるのだ。
さらに、近年はユーロなど円以外の通貨の方がキャリー取引(低金利通貨で調達した資金を高金利通貨に投じる取引)の対象にされやすい低金利状態にある。周知のとおり、ECBが設定する中銀預金金利はマイナス0.5%と日本より低い。そのため、市場でリスク回避的なムードが強まった場合、昨今は円ではなくユーロにキャリー取引の巻き戻しが生じて一気に買い戻されるといったケースも増えている。
むろん、円を「安全通貨」と見做す向きが完全に消え去ったわけではないが、少なくとも以前とは事情が大きく異なってきている。
しかし、今はアベノミクスの成果もあってデフレは徐々に克服されつつある。まして、近年は日本以外の国々にも物価の低下圧力がかかっており、その傾向はもともとデフレだった日本よりも他国の方が強めになっている。つまり、他の国々の通貨の方が円よりも購買力を強める傾向にあるのだ。
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(左)THIS MONTH RECOMMEND
著者が提示する具体的な解決案が秀逸著者の言う「もうケインズ理論は通用しなくなった」という事実に真っ向から反旗を翻す向きは少ない。
だからと言って、そうした経済の大きな変化に即した「新たな経済学」を身に着けている向きというのも意外に少ない。そこで、著者は為替や物価、株価、金融政策、年金、税制、米中貿易戦争など、27のテーマについて新たな視点と問題の読み解き方を本書の中で披露。個々の問題について具体的に提示されている解決案の中身が実に興味深い。
『経済を読む力 「 2020年代」を生き抜く新常識』大前研一著/小学館新書/902円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.com
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