

「リスク回避で円買い」は本当か?
田嶋智太郎 経済アナリスト
執筆時においては、国際金融市場でも新型コロナウイルス感染拡大の話題がとりわけ重要視される状況となっている。その世界的なマイナスの影響は計り知れないが、少なくとも中国経済が受けるダメージは浅からぬものとなろう。むろん、中国の景気減速は日欧米の経済にとっても痛手となる。
得体の知れない病原菌の世界的な感染拡大が続けば、とかく市場のムードはリスク回避的なものになりやすい。ところが、現実には米日の株価がやけに強含みで推移する場面があったり、ドル/円レートが意外なほど底堅く推移したりしている。本来なら、リスク回避で円買い・株売りという反応が通例ではなかったか。
幾つか理由はある。まず、米株価がやけに強いのは、足もとの景気が堅調で、かつ企業業績が好調に推移していることも大事な要素であるが、加えて市場で米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げ実施の期待が強まっていることも大きい。中国と地理的に離れた米国ではウイルス感染拡大に対する警戒の度合いも限られるが、それでも一定の悪影響を想定して“予防的な"利下げが再度行われることとなれば、根底に潜むバブルの芽は一層膨らむこととなろう。
もちろん、利下げ期待で米金利が低下すれば基本的にはドル安方向に傾きやすくなりそうなものだが、あにはからんや執筆時のドルはユーロや円に対して一定の強みを発揮している。
正味のところ、これはドル高というよりもユーロ安。やはり、ウイルス被害による中国の景気減速懸念は、強い経済的関係性を持つユーロ圏の域内景気にも影を落とすとの連想が働きやすい。もともと独仏の景気がなかなか上向かなかったところに新たな禍(わざわい)が舞い込んできて、まさにユーロ圏の域内景気は「泣きっ面にハチ」である。結果、ユーロに強い売り圧力がかかってドル高となり、同時に対円でもドルの強みは損なわれない。
得体の知れない病原菌の世界的な感染拡大が続けば、とかく市場のムードはリスク回避的なものになりやすい。ところが、現実には米日の株価がやけに強含みで推移する場面があったり、ドル/円レートが意外なほど底堅く推移したりしている。本来なら、リスク回避で円買い・株売りという反応が通例ではなかったか。
幾つか理由はある。まず、米株価がやけに強いのは、足もとの景気が堅調で、かつ企業業績が好調に推移していることも大事な要素であるが、加えて市場で米連邦準備制度理事会(FRB)による追加利下げ実施の期待が強まっていることも大きい。中国と地理的に離れた米国ではウイルス感染拡大に対する警戒の度合いも限られるが、それでも一定の悪影響を想定して“予防的な"利下げが再度行われることとなれば、根底に潜むバブルの芽は一層膨らむこととなろう。
もちろん、利下げ期待で米金利が低下すれば基本的にはドル安方向に傾きやすくなりそうなものだが、あにはからんや執筆時のドルはユーロや円に対して一定の強みを発揮している。
正味のところ、これはドル高というよりもユーロ安。やはり、ウイルス被害による中国の景気減速懸念は、強い経済的関係性を持つユーロ圏の域内景気にも影を落とすとの連想が働きやすい。もともと独仏の景気がなかなか上向かなかったところに新たな禍(わざわい)が舞い込んできて、まさにユーロ圏の域内景気は「泣きっ面にハチ」である。結果、ユーロに強い売り圧力がかかってドル高となり、同時に対円でもドルの強みは損なわれない。