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無力で群れるしかない 生贄となるものの運命

さて、目の前の猟奇殺人事件に対しても、彼女は無力感を味わっている。興味深いのは、生後1年以内の子羊の皮を剥ぎ、なめして作る最高級のラムスキンの製法と、“バッファロー・ビル"の犯行とが重ね合わされていること。被害者たちは、強制的に沈黙させられ、生いけ贄にえとなってしまう子羊というわけだ。
 と同時に、この生贄のイメージは、人間一般を指し、いわゆるキリスト教の世界観にも当てはまる。無力で群れるしかない我々は、神に導かれるべき「迷える子羊」であり、沈黙と悲鳴との間を彷徨う存在なのだ。レクターとクラリスの対話から出てきたキーワード、“子羊"の意味を探れば探るほど『羊たちの沈黙』は面白くなる。実に複雑な“皮の肌触り"と“肉の味"を持った作品である。

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轟夕起夫
映画評論家。
雑誌「キネマ旬報」「映画秘宝」「SPA!」「smart」「クイック・ジャパン」「ケトル」「DVD&ブルーレイでーた」などで執筆中。
最新編著に「好き勝手 夏木陽介 スタアの時代」(講談社)がある。
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