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「身代わりの羊」と「神の羔」

「創世記」によれば、契約の民の始祖アブラハムは、羊を飼う者の長としてカナンの地におもむいた。「わたしが示す地に行きなさい。わたしはあなたを祝福し、あなたは祝福の基もといとなるであろう」という神の言葉にしたがって。
 子宝に恵まれなかったアブラハムは神の言葉によって男子を得た。神の言葉どおりイサクと名づけた。
 あるとき神はアブラハムを試みて言った。「あなたの愛するひとり子を、わたしが示す山で燔はん祭さいとしてささげなさい」と。
 アブラハムは薪を割り、それをイサクに背負わせ、みずからの手には火と刃物をもって山を登った。
「父よ」とイサクは言った。「燔祭の子羊はどこにありますか」。
「子よ、神みずから燔祭の子羊を備えてくださるだろう」
 そう言ってアブラハムは神の示された場所に行き、祭壇を築き、薪をならべ、イサクを縛ってその上にのせた。そして刃物をもった手をさし伸べ、最愛の子を殺そうとした。
 刹那、神の使いが言った。「アブラハムよ! わらべに手をかけてはならない。何もしてはならない。あなたが神をおそれる者であることを、わたしはいま知った」と。
 アブラハムが目をあげるとそこに1頭の雄羊がいた。彼はそれを子の代わりに神にささげた。
 ここに、救いを申し出た神と人との契約が成立した。「身代わりの羊」つまり、媒なか介だちとしての羊、証しとしての羊なくして契約は成りえない。
『旧約聖書』は、やがて現われる救主を預言した。彼は「ほふり場にひかれてゆくおとなしい子羊」のようであり、人々の咎のために苦しみ、打たれ、人々の罪を負ってみずから神の供物となるだろうと。
 預言は成就した。「神のひとり子イエス」が来臨し、救いの業が成し遂げられた。これを記したのが『新約聖書』であり、「神の羔こひつじ」イエスを媒介とした新たな契約によって、全人類に救いの道がひらかれた。
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