
ファン・エイク兄弟 「神秘の子羊の礼拝」(「ゲントの祭壇画」部分)
1432年(ベルギー・ゲント 聖バーフ大聖堂)
竰クBridgeman Art Library/PANA
油絵具を使って描かれた最初期の油彩画で北方ルネサンス絵画の最高傑作のひとつ。多翼開閉式の巨大な
祭壇画の一枚で、キリストを象徴する子羊には後光がさし、天使や聖職者、殉職者などが取り囲んでいる。
1432年(ベルギー・ゲント 聖バーフ大聖堂)
竰クBridgeman Art Library/PANA
油絵具を使って描かれた最初期の油彩画で北方ルネサンス絵画の最高傑作のひとつ。多翼開閉式の巨大な
祭壇画の一枚で、キリストを象徴する子羊には後光がさし、天使や聖職者、殉職者などが取り囲んでいる。

不可思議な羊の正体 Vol.2
「黄金の生命」としての羊 ―祈りと再生のシンボル―
多摩美術大学教授・美術文明史家 鶴岡真弓
多摩美術大学教授・美術文明史家 鶴岡真弓
「メリーさんの羊」という歌をご存じのことでしょう。その歌に「雪のように白いフリース」という歌詞が出てきます。言うまでもなく「フリース」とは一頭の羊からひとつながりで採られた「羊毛」のこと。軽くて暖かく、現代のファッションの素材としても人気があります。ただし現代人が用いているフリースは、石油からつくることができますが、1万年前の昔から、羊毛は、生きている羊のからだを犠牲にして人間に与えられてきた、「生命そのもの」でありました。「羊毛」こそは、「人と羊」の長い歴史とその関係を、最初に浮かび上がらせてくれるものなのです。
ところで「メリーさんの羊」の歌では、羊毛の肌触りの良さや、美しい色への感動が、「雪のように白い」という言葉で表されています。けれども実は羊毛は、白やクリーム色にとどまらず、古代人にとって、いや、地域によっては今でも、「ゴールド」に輝き、黄金に匹敵する宝物として存在してきたのでした。
ところで「メリーさんの羊」の歌では、羊毛の肌触りの良さや、美しい色への感動が、「雪のように白い」という言葉で表されています。けれども実は羊毛は、白やクリーム色にとどまらず、古代人にとって、いや、地域によっては今でも、「ゴールド」に輝き、黄金に匹敵する宝物として存在してきたのでした。