
本間美術館が江戸・明治期の繁栄の象徴なら、土門拳記念館は、現代の芸術の体現である。世界的写真家である土門拳は、山形県飽海郡酒田町(現・酒田市相生町)出身で、酒田の名誉市民第一号でもある。1983(昭和58)年に完成したこの記念館は、「自分の全作品を郷里酒田市に贈りたい」という土門の意向に応える形で建てられた。土門の全作品約7万点を収蔵した日本最初の写真専門美術館だ。感じるのは、とにかく圧倒的なまでの“完成美"。館内のどの空間を切り取ってもアートになる。それは、建築、庭、オブジェといったすべての要素が、一流アーティストの手により、土門の世界を引き立てるためだけに造られているからだ。
思えば本間美術館も、戦後の打ち沈んだ酒田の勢いを盛り返そうという“公益の精神"から、別荘の一般公開を始めたと聞く。故郷に全作品を寄贈した土門もしかり、酒田には、故郷愛を育てる不思議な魅力があるのかもしれない。そしてその思いがまた、酒田の洗練された文化へと還元されているのだ。
思えば本間美術館も、戦後の打ち沈んだ酒田の勢いを盛り返そうという“公益の精神"から、別荘の一般公開を始めたと聞く。故郷に全作品を寄贈した土門もしかり、酒田には、故郷愛を育てる不思議な魅力があるのかもしれない。そしてその思いがまた、酒田の洗練された文化へと還元されているのだ。