PAGE...1|2
 些(いささ)か極端な財政拡張路線を標榜(ひょうぼう)するだけでも、良かれ悪(あ)しかれ米金利には上昇圧力がかかり、少なくとも当初は相応にドルが買われやすくなる。結果として円安がある程度進むと、日本の貿易黒字は維持しにくくなる可能性が高まり、ますます円安傾向が強まりやすくなる。円安が進めば、そのぶん日本の対米輸出は盛んになりそうなものだが、そこは相手がトランプ氏である。為替政策に代わる何らかの対抗手段を講じてくることも考えられよう。
 嘘(うそ)か誠か、トランプ氏は今後10年間の経済成長率を平均3.5%に高め、最終的には4%に引き上げると公約している。財政拡張によって本当にそこまで成長率が高まれば、米連邦制度準備理事会(FRB)はいやがおうにも政策金利を段階的に引き上げる必要に迫られるはずである。その役割を引き受けるのは、トランプ氏が忌み嫌うジャネット・イエレン現議長でなくともよい。
 米金利上昇なら、ますます日本の金融機関は外債投資に精を出さざるを得なくなる。そうでなくとも、足元では過去20年で最大規模の外債投資が先物での円買いを組み合わせて行われており、いずれ伴う円売り圧力は急激に膨らむものと見込まれる。その結果、今後は円安・ドル高の傾向が再び強まっていくものと考える。
(左)話題の著者がつづった第2弾!
 言わずと知れたベストセラー『世界経済大乱』の著者による第2 弾。前著ではブレグジットの可能性に鋭く切り込んで話題となったが、今回は米国でトランプ氏支持に回った人々が置かれた状況をクッキリと浮き彫りにしている。もはや世界のあちこちで「まさか」や「ありえない」が現実のものとなってきた。つまり、日本を取り巻く外部環境は激変しているわけで、それでも未来に活路は見いだせるのかを本書と共に熟考したい。
『世界経済 まさかの時代』滝田洋一/日本経済新聞出版社/918 円
(右)たじま・ともたろう 金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産形成まで、幅広い範囲を分析、研究。講演会、セミナー、テレビ出演でも活躍。tomotaro-t.jimdo.com
PAGE...1|2
LINK
STYLE
米大統領が諦めざるを得ないのはドル高の是正!?
>>2019.10.1 update
STYLE
金融コラム 田嶋智太郎 経済アナリスト
>>2015.11.16 update
STYLE
金融コラム 田嶋智太郎 経済アナリスト
>>2016.6.8 update
STYLE
2020年の米国経済はバブルの様相?
>>2020.2.17 update
STYLE
世界経済は一段とバブルの様相を色濃くする!?
>>2020.12.22 update

記事カテゴリー