人民元の行方
為替に関してはもう一つ、中国の人民元を通貨バスケットに入れるかどうかで、悩んでいる方も少なくないだろう。しかし、それは「中国の策にまんまとはまってしまう」だけ。人民元はまだ自由化されていない、市場ではなく政府が価格を決める通貨だ。そういう通貨を円・ドル・ユーロを始めとする他の通貨と同じステータスで扱うのはおかしい。
しかし一方、中国経済が存在感を増し続けていく中で、人民元を無視するわけにもいかない。特にヨーロッパは中国と一蓮托生(いちれんたくしょう)のようになっているので、人民元の価値が安定することを願っている。IMF(国際通貨基金)も、中国からの「人民元を一つの主要通貨として認めて欲しい」との要請を受け、むげにはねつけられないのが実情だ。すでに「早晩、自由化を進めてくださいよ」という条件付きで認める動きになっている。アメリカもまた、南沙諸島を始めとする懸案事項の何かを妥協させ、その見返りに人民元を認める可能性がある。
いずれにせよ、人民元は当面、外交のツールとして使われるはず。投資はそのシナリオが進んでから考えるべきで、今は時期尚早と言えよう。
金は5年後にグラム7000円!
こうした経済情勢の中で、金はどう動くのか。金は有限の資源で、市場規模も小さく、もはや国際通貨として復活するとは考えにくいが、多くの国が外貨準備で保有している。特に中国・インドを中心とする新興国は、輸出で稼いだお金の価値を保つために、あるいは将来的に大量に必要になるPCやスマホに欠かせないハイテク素材を確保するために、せっせと金を買っている。逆にドイツ、スイス、フランスなどは、これまで外貨準備の7割を占めていた金を売却する傾向にある。「金はお金のある国に集まる動物的な嗅覚(きゅうかく)を持つ」ではないが、金は今、西から東へと流れているわけだ。
日本だって、最近は「金・プラチナ、買いますショップ」が増え、金をリサイクルして地金にし、中国・インドに売るビジネスが主流になっている。が、私個人としては「買い取った金を経産省あたりが音頭を取って買い取り、政府が備蓄するべきだ」と考えている。なぜなら5年、10年後に経済が回復した時に、金は必ず役立つ日本の資産になるからだ。ハイテク素材としての金は、需要が増しこそすれ減ることはないし、外貨準備としても必要。売っている場合か、という話である。
そういった状況から見て、金のグラム価格は現状、中値で4400円だが、東京オリンピックが開催される2020年には7000円になる。私は自信をもってそう言い続けている。金は利息も配当金も生まないので、資産運用ではあくまで脇役。主役は株・債券。しかし、金は嵐の晩に輝く。少しずつ買いためておくことをオススメしたい。
しかし一方、中国経済が存在感を増し続けていく中で、人民元を無視するわけにもいかない。特にヨーロッパは中国と一蓮托生(いちれんたくしょう)のようになっているので、人民元の価値が安定することを願っている。IMF(国際通貨基金)も、中国からの「人民元を一つの主要通貨として認めて欲しい」との要請を受け、むげにはねつけられないのが実情だ。すでに「早晩、自由化を進めてくださいよ」という条件付きで認める動きになっている。アメリカもまた、南沙諸島を始めとする懸案事項の何かを妥協させ、その見返りに人民元を認める可能性がある。
いずれにせよ、人民元は当面、外交のツールとして使われるはず。投資はそのシナリオが進んでから考えるべきで、今は時期尚早と言えよう。
金は5年後にグラム7000円!
こうした経済情勢の中で、金はどう動くのか。金は有限の資源で、市場規模も小さく、もはや国際通貨として復活するとは考えにくいが、多くの国が外貨準備で保有している。特に中国・インドを中心とする新興国は、輸出で稼いだお金の価値を保つために、あるいは将来的に大量に必要になるPCやスマホに欠かせないハイテク素材を確保するために、せっせと金を買っている。逆にドイツ、スイス、フランスなどは、これまで外貨準備の7割を占めていた金を売却する傾向にある。「金はお金のある国に集まる動物的な嗅覚(きゅうかく)を持つ」ではないが、金は今、西から東へと流れているわけだ。
日本だって、最近は「金・プラチナ、買いますショップ」が増え、金をリサイクルして地金にし、中国・インドに売るビジネスが主流になっている。が、私個人としては「買い取った金を経産省あたりが音頭を取って買い取り、政府が備蓄するべきだ」と考えている。なぜなら5年、10年後に経済が回復した時に、金は必ず役立つ日本の資産になるからだ。ハイテク素材としての金は、需要が増しこそすれ減ることはないし、外貨準備としても必要。売っている場合か、という話である。
そういった状況から見て、金のグラム価格は現状、中値で4400円だが、東京オリンピックが開催される2020年には7000円になる。私は自信をもってそう言い続けている。金は利息も配当金も生まないので、資産運用ではあくまで脇役。主役は株・債券。しかし、金は嵐の晩に輝く。少しずつ買いためておくことをオススメしたい。

豊島逸夫事務所 豊島逸夫(としま・いつお)
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部(国際経済専攻)卒業。三菱銀行(現・三菱京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとして活躍。金の第一人者として知られる。2011年10月3日に「豊島逸夫事務所」を設立、現在、代表を務める。チューリヒ、ニューヨークでの豊富な経験をもとに、独立系の立場から金市場を始め国際金融、マクロ経済動向について説く。
1948年東京生まれ。一橋大学経済学部(国際経済専攻)卒業。三菱銀行(現・三菱京UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され、外国為替貴金属ディーラーとして活躍。金の第一人者として知られる。2011年10月3日に「豊島逸夫事務所」を設立、現在、代表を務める。チューリヒ、ニューヨークでの豊富な経験をもとに、独立系の立場から金市場を始め国際金融、マクロ経済動向について説く。