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「2016年の世界経済のシナリオを読み解く」
Photo TONY TANIUCHI 
Text Junko Chiba
中国の株価が暴落―今年の夏に起こった「チャイナショック」の行く末がはっきりしないまま、2015年が終わろうとしている。チャイナショックでは済まず、チャイナリスクへと長期化するのか。世界経済は新しい年に向かって、どう動いていくのか。アベノミクスが限界を迎えた時、日本経済はどうなるのか。自他ともに認める「総合的にマーケットを見られるプロ」である豊島逸夫氏に、世界と日本の経済の今後を読み解いてもらった。
投資ならびに資産運用を実り豊かなものにするための基本は、世界経済がこの先どう動くか、現状をしっかり把握し、近未来を的確に予測することにある。豊島逸夫氏が金利、中国の動き、為替、アベノミクスなど、八つの観点から想定する“世界経済の近未来図"を紹介する。

ゼロ金利からの脱出

 2016年にかけての世界経済の流れの中で、一番大きなトピックは「ゼロ金利時代」が終わることだ。読者的には、銀行に金を預けておいても、多少は金利がつくようになる。かなり画期的なことである。
 これまで私は、ゼロ金利はある意味で「劇薬」だと言ってきた。人の体にたとえるなら、世界経済はリーマンショックという心筋梗塞(こうそく)のような病に見舞われて瀕死(ひんし)の状態に陥った。その後遺症を和らげ回復を促すために、ゼロ金利という劇薬の点滴を打ち続けた。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)も日銀も金利をタダにして「どんどん金を借りて、設備投資をしてください。新しい事業を始めてください。必要とあれば、札をじゃんじゃん刷りますよ」とやってきたわけだ。
 それでもなかなか効果は表れなかったが、ここへきて“ドクター・イエレン"が「そろそろ点滴をはずしてもよさそうだ」との“診断"に至った。それは裏を返せば、金を借りたい人が出てきた、米国経済が活性化されつつあるということだ。実際9月末には、FRBが開催する、金利政策の最高意思決定機関である委員会FOMC(連邦公開市場委員会)が年内利上げの可能性を示唆した。その強い意思表示に、さすがに瞬間、市場はひるんだ。株・債券は急落しドルは急騰したが、その後のNYの株価の切り返しが目覚ましかった。前日比マイナス圏にまで沈んだ後、プラス198ドルで引けたのである。おそらく、ウォール街最前線で働く「利上げを知らない世代」の人たちも、未知の現象に対する不安を和らげてきたのだろう。「利上げ、恐れるに足りず」と思えるまでに、米国経済の回復の兆しを実感している、と見ることもできる。
 今後はアメリカがゼロ金利からの脱出の口火を切り、旗振り役となって世界経済を本格的に回復させることが見込める。そういう意味で、「2016年はリーマンショックの呪縛から解き放たれる元年になる」というのが私の見立てである。
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