
(左)“鮎のファルシ 酢橘のゼリー 蓼と西洋ワサビのクリーム” 内臓はピュレに、蓼酢のかわりに酢橘をジュレ、蓼をクリームにアレンジ。「来夏のメニューにも載せたい」(シェロームシェフ)ほどの逸品に。(右)“桃のよもぎメルバ きなこのアリュメット” フランスのデザート、ピーチメルバに、よもぎを取り入れたもの。下から桃のシャーベット、白桃のシロップ煮、よもぎのアイス。最後に冷たいシロップをかける。
コラボレーションの一つの答え
試作の過程では、中東氏とジェロームシェフは何度も意見をかわしあった。「ジェロームシェフからは、料理のボリュームについて、全体で加減するようアドバイスを受けました。お客様には、最後のデザートまでむさぼるように食べてほしいからと。私も彼も、目指すところは一つ、お客様が歓ぶこと。だから私は、彼の提案を素直に受け入れることができるし、そうしたほうが明らかに出来がい良いんです」。一方、中東氏が和の食材についてジェロームシェフに教授することもある。たとえば鮎。フランス料理では魚全体を食べることが稀なため、ジェロームシェフも切り身にすることを考えた。そこで中東氏が、内臓の苦みも鮎の大切な旨みであることを伝えたことから、内臓のピュレを身で包むアイデアが生まれたという。脇には、西洋わさびのクリームと蓼のピュレが添えられた。完成したのは、まるで、清流で戯れる鮎を描いたかのような一皿。和とフレンチの融合を、見事に表現する逸品となった。