

(左)「大都市軸」 セルジ・ポントワーズ1980- 年。(右)「ネゲヴ記念碑」 ベエル・シェバ、イスラエル1963-68年。
空間への目覚め
絵画、挿絵から舞台美術へと創作の幅を広げると同時にフレスコ画に対する習熟から、イスラエル国内で壁画を多数担当するようになった。ジャコメッティ、ブランクーシなどに影響を受け、次第に彼はレリーフ、彫刻作品へと自らの表現を展開させていく。1963-68年にイスラエル南部の砂漠、ベエルシェバに築き上げた戦碑−ネゲヴ記念碑は、イスラエルのイギリス統治に対する戦闘の記念碑であり、カラヴァンが手掛けた最初の大規模野外作品である。コンクリートの塔や球体で構成されたこの作品は砂漠の中にあって、古代遺跡か要塞のような異彩を放つ。斬新な造形によってその場所固有の歴史を想起させ、メッセージを伝えるカラヴァン流の原点がここで生まれた。その後、世界中でその土地、人々の記憶に由来する大規模な彫刻—環境彫刻を次々に実現させていく。パリ近郊の都市セルジ=ポントワーズを貫く全長3キロの“大都市軸”やスペインの小村ポルト・ボウの海岸に造られた、哲学者ヴァルター・ベンヤミンを追悼する“パサージュ”は広く知られている。