
現在のブリヂストン美術館。
『世の人の楽しみと幸福のために』
本業の不振などにより、多くの企業美術館が閉鎖やコレクション散逸などの憂き目にあっている中、ブリヂストン美術館は石橋財団という財団法人組織によって、高い質と安定した集客力を保ち続けている。それは、正二郎本人が美術品をこよなく愛しており、社会貢献を念頭に置いた1本筋の通ったコレクションを形成してきたためでもあるだろう。投機目的やイメージ向上のための美術品蒐集とは、端から一線を画していたのである。開館式でのあいさつでも、「経済的理由で海外修行に行けない若い画家の、勉強のための資料になれば」、「一般大衆のなぐさめや楽しみになれば」、また「美術館を運営する上で、微力ながらも国際的なつながりを深めることができれば」、といったことに触れていたという正二郎。先見の明に優れ、努力を重んじる人柄だという彼の情熱は、魅力ある美術館という形で結実した。『世の人々の楽しみと幸福のために』という石橋正二郎のモットーは、今もブリヂストン美術館の基本理念として活き続けている。