
(左)置物(1877年)/シルバー、エナメル、ロッククリスタル(高さ 296mm/底部165×165mm)。(中)リング(1900年)/ゴールド、プラチナ、ダイヤモンド(センター 2.24ct./トップ 13mm×11mm)。(右)プリンセス バングル(2002年)/エメラルド、ブラックゴールド仕上げ(長さ 118mm)。
ブシュロンの歴史を物語る芸術作品たち
今回「来日」したミュージアムコレクションの中でも、“これがブシュロン?”と一瞬感じてしまうほどの作品が1877年に製作された置物。プレカジュールエナメルのスクリーンに絵を描く日本の子どもをモチーフにしたこの作品は、台座に日本風のクロワゾネエナメルをあしらったクリスタル製。デザイナーであるポール・ルグランが、当時流行していた数多くの異国趣味を大胆に組み合わせて完成させた大傑作である。多彩な色を活用したエナメルや細部にまで施された繊細な金装飾が圧巻で、スクリーンの横に配された花瓶や筆入れが、実在したブシュロンの作品のミニチュア版である点もユニークだ。また、1900年に製作された“ダイヤモンドに彫刻を施したリング”も必見。硬度の高い石や貴石に刻印を施すことはあっても、ダイヤモンドに施すことは皆無であった当時では、非常に贅沢で高価であった同作品。侯爵家の家紋を刻印したダイヤモンドの周りを飾るローズカットダイヤモンドがよりゴージャス感を演出している。2002年に発表されたハイジュエリーコレクション「ノット・ブルジョワ」のアイビー(つた)バングルは、ブラックゴールド仕上げの地金にエメラルドをセッティングした芸術性の高い作品。“忠誠”を意味するつたの枝や葉の微妙な様子を見事に表現している。