
ソムリエとして最も大切にしていること
ワインに対して敬意を持って接することです。ワイン
ボトルは、自然の恵み、栽培する人がいて──と、さま
ざまな思いが詰まった結晶です。そのワインは、お客
さまにお飲みいただいた時点で天寿を全うします。ソ
ムリエの役割は、ワインの最後を見届けること。つまり
ソムリエが中途半端な仕事をすると、ワインや、そのワ
インに込められたさまざまな人の思いが台無しにな
ってしまうのです。だから私はいつも、「どうぞ、このワ
インがおいしくお客さまに飲んでもらえますように」
と願いをこめて、ワインセラーからワインを出し、大地
や作り手に思いを馳せながらサービスを行うのです。
作り手は少しでもいい葡萄を育てようと、とてつもな
い努力をし、葡萄の状態に合わせて毎年やり方を変え
ています。彼らの「いいワインを作ろう」という志があ
って、初めて、いいワインが完成する。そんな作り手の
思いを胸に秘めながら仕事をしていきたい、そんな風
に思っています。