
フィクションにも現実にも感じられる作品
しかしカル作品は本随として、常に外部的な関係性の上に築かれている。その意味で、暴露的なナルシズムとは一線を画する。常に他者を通して彼女自身に戻ってくる投影的な実人生の提示であり、一方で彼女をフィルターに他者の人生そのものが浮き上がってもくる構造だ。フィクション的な要素を所々に内包しながら、実人生の実感をもった日記や写真といった要素による作品構成は、実人生のフィクション化なのか、フィクションを実生活として見せかけているのか、どこまでが作品でどこまでが私生活なのか、小説家なのか写真家なのか、コンセプチュアルなのか、ブラック・ユーモアなのか、『カメレオン』と称される彼女は、日常の断片を収拾調査する『現代の考古学』を実行し、ことごとく我々を煙に巻く。今回、立体小説的なインスタレーション作品を展示する会場が、フランス国立図書館というのも、カル流の肩すかし的な、逆説的なユーモアが感じられる。