
1952年に韓国の釜山で生まれた全龍福(チョン
ヨンボク)氏は、優れた画人のいる家庭環境に
育まれ、20歳で漆芸の道を志した。その天賦の
才が認められたのは、1986年にソウルで開かれ
た現代美術大賞展での大賞の受賞であった。そ
の後、東京の目黒雅叙園から5000点にのぼる漆
芸品の修復と創作を依頼され1988年に来日。そ
の活動にふさわしい環境を求めて全国をわた
り歩き、良質の漆が採れる水と空気が澄んだ岩
手県の川井村で作業を始め、3年の歳月をかけ
て目黒雅叙園の膨大な漆作品の修復から再製
に尽力し、見事に復元を成し遂げた。この全氏
の卓越した漆芸技と、長年クレドールが培って
きた薄型高精度の機械式時計を生み出す奥義、
そして独自の彫金技巧が、極めて高度に渾然一
体と化した「漆芸コレクション」は、日本の伝統
工芸の英知を後世に伝える作品である。
(左)目黒雅叙園の修復、岩山漆芸美術館の開館で見事成
功をおさめ、第三の挑戦「時計」という新たな世界で日本の
伝統と文化を凝縮した作品をつくりあげた全龍福(チョン
ヨンボク)氏。(右)世界最高の12振動/秒の動きが美しい
クレドール ジュリ 典雅の裏面。
