
大谷浩己 フランスのボルドーに滞在し、ボルドー大学醸造学部主催のワイン講座を受講、またフランスのワ
イナリー約300ヶ所を巡る。著書は「東京味」(四ツ谷ラウンド)「フランスワインの12ヶ月」(講談社新書)など。
客と店は共犯関係である
今の日本のレストラン状況を見て思うのは、スタッフ
が店にもっと定着してほしいってこと。いつ行っても
変わらずその人が迎えてくれる、そういう良い店が増
えてくれたらと思います。でもそれには客も変わらな
いとね。スタッフが店に残るような仕組みを、客も一緒
になって作っていかないと。レストランて、客がお金を
払って食べるという一方的な関係に見えるけど、実は
共犯関係なんですよ。完成度の高い味を求めるなら、
そこには料理人だけでなく客の力も必要なんです。最
高の料理は、客と料理人との交流があって初めて生み
出されるものだし、サービスもまた然りだから。料理人
やスタッフ、客との交流の中でレストランは作られて
いく。レストランは店のものだけでなく客のものでも
ある、だから与えられるだけでなく自分も店の雰囲気
や味を作っていく、大切に育てていくんだという意識
を客がしっかり持てば、日本のレストラン事情はまた
変わると思います。