
大地・月・太陽を表現した3つの展示室が並ぶ奈義町現代美術館。手前は展
示室「太陽」。Photo by K.Furudate


(左)風にそよぐステンレスワイヤーと水のきらめきが心地よい、宮脇愛子の「うつろひ」。(右)岡崎和郎「HISASHI—補
遺するもの」。ブロンズ色のオブジェとカーブを描く白い壁が一体になった静謐な空間。Photo by K.Furudate
感受性を刺激する斬新なアートの空間
1994年、岡山県に誕生した奈義町現代美術館はコミッション・ワークの先駆けとなる例だ。一般の
美術館では収容不可能な作品を3組のアーティストが構想し、建築家・磯崎新が空間化。その斬新
な空間の使い方には目を見張る。なだらかに稜線を描く那岐山のふもとに立つ美術館は、3つの展
示室と作品で構成される。まず目にするのが、宮脇愛子の「うつろひ」。那岐山を望む中庭の池と奥
の展示室「大地」にしなやかなステンレスワイヤーが弧を連ねる。風にワイヤーが揺れ、水面のさ
ざなみが変化する様を眺めていると、時の緩やかな流れを感じる。三日月形の形をした展示室「月
」は安らぎを感じさせる空間だ。壁に取りつけられた3体のオブジェは、岡崎和郎の「HISASHI—補
遺するもの」。雲のような形はテーブルの端から垂れ下がった石膏をヘラで延ばし折り重ねた時
と重力の彫刻。生き物がブロンズに凝固したかのような有機的な造形は色香が漂う。