
(左)フィルミニの教会堂(サン・ピエール教会)。(右)光が特徴的な教会内部。
幾何学から光の空間へ
晩年のコルビュジエが手掛けた3つの宗教建築は、窓を多用した開放感あるそれまでの様式とは打って変り、閉鎖的ともいえる外観を呈している。これら3つの建築は「光によって宗教的空間を作り出す」というテーマの下、取り組まれたものだった。「ロンシャンの礼拝堂」はマッシュルームのような外観に付けられた小さな窓が印象的で、内部では窓の一つひとつから採り込まれる太陽の光が祭壇を柔らかく照らす。「ラ・トゥーレットの修道院」では、採光が創り出すアートともいえる幾何学模様と、天井のトップライトが照らす礼拝堂部分が強烈なインパクトを持って迫ってくる。「フィルミニの教会堂(サン・ピエール教会)」においては、一見ランダムに思える無数の小さな穴が厳かな空間を演出し、訪れる人の内面までも照らすかのようだ。コルビュジエは「幾何学」と「色彩」を印象づけることで多くの印象的な空間を生み出してきたが、「光」というテーマにおいてもここに大成功を収めたのである。