


(上)イスタンブール歴史地区に堂々とそびえるスルタンアフメット・ジャーミー。直線と円の融合が芸術的。(左下)最古の時期
に建設されたウマイヤド・モスク。この時代の建築物は、縞模様と直線的な屋根が特徴。(右下)パキスタンのバードシャーヒ・モ
スクの収容人数は、なんと6万人。礼拝の日は敷地がすべて埋まる。

構造美×装飾美
〜イスラーム建築の流儀〜
〜イスラーム建築の流儀〜
Photo&Text Hiroshi Urata
モスクは、雄大荘厳であれ。
比類なき存在感とシンメトリーの美しさ、そして静粛
性。イスラーム建築の独自性は、これらの特徴に要約
できる。特に、イスラームの国々の各所に建てられて
いる礼拝所のモスクは、歴史的に地域の中心として機
能してきたため、古来からの特徴が表れているのだ。
圧倒的な存在感を持つ理由はいくつか考えられるが、
特筆すべきはシンプルなデザインと設計によって成
立していることだろう。構成はモスクによってさまざ
まだが、結局は定規とコンパスだけで外観も内観も描
けてしまうものが多い。簡潔、つまり潔いのである。ま
た、モスクを筆頭にイスラーム建築は統一性と多様性
を併せ持っている。信仰に関わる基本理念=設計指針
はひとつ。しかしながら、長い歴史の中で、他の文化か
らの影響を受けながら、地域に適した工法や材料を追
い求めてきたため、さまざまな作風が存在するのだ。
イスラーム建築を見ることは、現代建築と博物館を同
時に楽しむようなものである。