
テライユ家が築いた永遠の輝き
20世紀、トゥールダルジャンを不動の地位に築き上げたのは、テライユ家である。1911年アンドレ・テライユがオーナーに就任すると、店舗とワインカーブを拡大。屋上にガラス張りのテラスを増築し、セーヌ河岸のパノラマが広がる見事なダイニングを実現した。1933年にはミシュラン3つ星を獲得し、以降63年間、星を維持する。第二次世界大戦中は、ナチスから希少なワインコレクションを守るため、アンドレの息子クロードが自らの手でワインカーブを壁で塞ぎ隠した。そして舞台俳優になるのが夢だった彼は、劇場のように芸術的でドラマチックな時間と空間を創りだす。そこにエリザベス女王、ケネディ、マリリン・モンロー…、各国の首脳やスターが集い、華麗なひと時を楽しんだ。2006年クロードが逝去すると、28歳の息子アンドレが3代目オーナーに就任。400年の歴史を誇る美食の館は今、若き貴公子によって、みずみずしい息吹を吹き込まれている。セーヌ川のほとりで、トゥールダルジャンの威風と輝きは褪せることがない。