


設立以来初めてとなる現代アート開催のため国立シャイヨー劇場内では、連日急ピッチで準備が進められた。
それだけにこのプロジェクトの始動と継続は異
例と言える。プロジェクト・ディレクターである
ブリュノ・デュシュマン氏は、元々はライターと
して、テレビや映画シナリオ、音楽批評、小説な
どを執筆していた。その後、縁あって、国立シャ
イヨー劇場の書籍部担当者として赴任し、10年
を過ごす。赴任当初はライブラリーの品揃は、
演劇劇場として備えるべき演劇関連のものだ
けであったが、コンテンポラリー・ダンスから現
代アート季刊誌まで、広くアート領域をカバー
する収集を始めたのも、同氏であった。そして、
この新しい現代アート・プロジェクトの導入へ
と劇場を導いた、仕掛け人である。「アート作品
の展示は、必ずしもアートの為に用意された場
でなくても、可能であるはず」。国立シャイヨー
劇場が擁する3ホールすべてがフル稼働する日
には、一晩で1,500人以上もの観客が、観劇を目
的に足早にホールへと向かう