衰退から変貌へ
しかしここ数年、広場から望むエッフェル塔という景
観を求め来る観光客は押し寄せるものの、文化エリ
アとしての事実上の意義は薄くなり、一抹の寂しさ
を醸し出していたというのが実態である。というのも
、既に国立フランス文化財博物館は、リニューアルに
むけた工事のために閉鎖しており、同翼に隣接して
いた映画博物館も、パリ東南部、ベルシー新開発地区
へ移動。対翼の国立人類博物館はといえば、所蔵品の
大部分を、新しく建築されたケ・ブランリー美術館へ
ともって行かれ、事実上もぬけの殻状態のままでの
稼働を余儀なくされていた。つまり、そのステータス
と歴史、そして建築的価値や立地的な価値以外には、
シャイヨー宮全体としての文化活動が、長い冬眠期
であるかのような状況が続いていた。それがここに
きて、建築・遺産センターの華々しいオープンを皮切
りとして、にわかにシャイヨー宮は生命力を取り戻し
つつある。

(左)シャイヨー宮は中央のテラスをはさんで左右に大きく翼を広げたような格好。セーヌ河をはさんで見事なシンメトリーをなす