


(左上)アンモナイトの化石から学んだとされる構造。美観だけでなく構造の強さも実現している。(左下)カサ・バトリョも晩年期
の秀作。世界レベルの石工が驚くほどの曲線が使用されている。(右下)ガウディは設計図を描くよりも、三次元で考察できる模
型を重視した。

独創的自然主義と生命
〜奇才ガウディの晩年〜
〜奇才ガウディの晩年〜
Photo&Text Hiroshi Urata
有機的な建築という史上初の試み
ガウディの建築物と出会うと、時が止まる。驚嘆からだ
ろうか、納得からだろうか、それともあまりに凄すぎて
唖然としてしまうからだろうか。おそらく、そのどれも
が正解で、答えはまだまだ他にもあるのだろう。冷静
に書くならば、ガウディのコンセプトの「自然主義」と
「独創性」から訪れたインスピレーションなのだが、と
てもひとことで書き表せるものではない。「自然」とは
書いて字のごとく、自然界を意味し、常に正常なもので
あり、最もリラックスできる状態を指す。ガウディの建
築群は、その「独創性」から唯一無二の存在で、写真で
見ると奇抜なものに他ならないが、実際に訪れてみる
と、驚くほど自然体でその存在を受け入れることがで
きるから不思議だ。ガウディ作品が「自然=生命であ
る」とするならば、ひょっとして呼吸でもしているので
はないか。そんな深層心理が働くから、私たちは息を
飲み、耳を澄ますのだろう。