しかし、戦後の消費文化の波は漆器を人々の暮らし
から遠ざけた。耐久性があり、使うほどに色に深みと
艶がます漆器は、かつては「代々受け継がれるもの」
だった。より長く使い続けるためとなれば、漆は何度
も何度も塗り重ねられる。必然、それは高価になる
が、何十年、何百年も使い続けられるのなら、決して
高い買い物ではない。だが戦後、高度成長期を経て、
日本には使い捨て文化が広まった。その影響で人々
は流行のものを安価で得るように。そして漆器は「高
価な贅沢品」となってしまった。また、日本には昔か
ら普通の家庭にも、もてなしの文化やハレの意識が
あり、漆器はそうしたあらたまった席用の器として用
意されいたが、近年、ライフスタイルの変化によっ
て、もてなしの文化やハレの意識が薄まり、漆の器は
必要とされなくなった。こうして、輪島塗に限らず、漆
器が日本の家庭の食卓に上らなくなってしまったの
だ。
