
漆を木から採取する「漆掻き」、器の型をつくる「木地師」、木地の形と肌を整える「研物師」のほか「下塗り師」「蒔
絵師」など、11の工程をそれぞれ専門の職人が担当する。写真は、最終的な仕上げをする「上塗り師」。
「器を手に持つ」文化
その性能の高さから、やがて食器に漆が常用されるよ
うになる。12世紀には日本の食器から土器が消え、ほと
んどが漆器となった。このため、器のやさしい感触を
愛で楽しむように、「器を手で持って使う」という日本
独特の食作法が生まれた。つまり、古来食器といえば
漆を塗った木の器だったのである。いわゆる漆器産地
が形成されたのは、江戸中期から後期にかけてのこ
と。なかでも、石川県・輪島が日本の漆器の名産地とし
て名を上げていった。その後、輪島塗は漆器の代名詞
と言えるほどの発展を遂げる。その背景として、良質の
漆が取れる木や、下地として使う珪藻土が豊富にあっ
たこと、さらには10人近くの職人が分業をして、ひとつ
ひとつの工程をきっちりこなしたため、質もデザイン
性も高い漆器がつくられることが、挙げられよう。