マリー・アントワネットもご執心
「漆黒」という色の名があるように、黒々と深みをたたえ、
潤んだような光沢をもつ漆。ヨーロッパの人々は日本の
磁器の白さに憧れるよりも前に、漆の重厚感あふれ、それ
でいてぬくもりが感じられる漆の黒に惹かれた。ことに、
他の国では見られない「蒔絵」は、その豪華絢爛な美で世
界を魅了した。鎖国とともに、ヨーロッパでは一時、その存
在を忘れられていたが、冒頭にあるように、19世紀後半か
ら20世紀前半にかけてのジャポニスム旋風によって、漆
が再びブームとなり、家具や宝石箱などとして重宝され
るようになったのだった。かのマリー・アントワネットも、
漆に金粉で文様が描かれた蒔絵の家具や小物をこよなく
愛した人物のひとり。「世界一の漆コレクター」の座は今
でも、誰にも譲っていない。

