

(左)TOKYO MON AMOUR 2002/20min(右)豊島由佳/2001年より自身の立ち上げた
"HELENA"プロジェクトで短編映像シリーズを開始。現在はポートレート的ドキュ・フィ
クション作品のシリーズを製作中。短編映像作家としての活動と共に、能管演奏家とし
ても活動している。

能の今をパリで伝える、
豊島由佳の世界
現代の映像作品に変換される能の物語
《松風》《隅田川》といった能の代表的な古典劇を独自の美意識で映像世界に甦らせるパリ在住の映像クリエイ
ター豊島由佳。"能が能たるための"面、装束、囃子、謡曲、型といった能を彩る全ての要素を削ぎ落としても、能
の世界観を表現することは可能なのだろうか? 彼女が2001年にスタートしたプロジェクト"HELENA"は、この疑
問を出発点に発足、以降新しい物語を紡いでいる。彼女の目指すのは単なる原典の翻案ではなく、むしろ原典に
ある要素を現代に変換、抽象化しその結果新しい物語を生み出すことにある。抽象的で断片化された映像は、そ
れ自体は意味を成さないものの、時間の進行とともに一つの糸を織り成すように《言葉なき物語》を形成してい
く。2004年まで続いたプロジェクトでは、《松風》を題材にした"TOKYO MON AMOUR"(2002)を制作、この作品は2度
目の渡仏前に東京で撮影した彼女の映像作品の処女作である。