映像的なイリュージョンで見る者を圧倒しながら、その実、
多様なマテリアルと技術を駆使して光や風といった環境、
そして建物の外部・内部の関係性までもダイナミックにコ
ントロールする。自律するかのような奔放な造形は官能的
ですらある。近年は、インテリアメーカーと協同しミラノ・サ
ローネでチェアや照明を発表、イヴ・サンローランの香水の
ボトルデザインを手がけるなど、プロダクトデザインにも
活躍の場を広げている。建築の魅力とは、何より「夢見てい
ることが現実のものとなって現れること」と語るヌーヴェ
ル。自らのプロジェクトはますますスケールアップし、壮大
なものとなりつつある。今年はパリ交響楽団オーケストラ
ホールがいよいよオープン。現在は、アラブ首長国連邦の首
都アブダビに2012年完成予定のルーヴル美術館分館「ルー
ヴル・アブダビ」に取り組んでいる。次はどんなイリュージョ
ンでわれわれを眩惑させるのだろうか。


アルミを用いたうねるような構造が目を引くパリ交響楽団オーケストラホール。Photo by Gaston & Septet
アブダビでプロジェクトが進行中のルーヴル美術館別館。ナツメヤシの葉陰をイメージしたという巨大なドー
ムから幻想的な光が降り注ぐ。Courtesy Ateliers Jean Nouvel