


(左)『タイトルなし/ポラロイド』(上)『作業靴/
ポラロイド』(下)『1941年3月28日、ヴァージニ
ア・ウルフが入水したウーズ川/ポラロイド』
copyright Patti Smith/copyright Fondation
Cartier pour l'art contemporain
67年からパティは写真作品を撮り続けるが、95年最愛の夫の急死に、ほとんどすべての創作活動が続行不可能
となる。その頃の彼女の唯一の創作手段はポラロイドである。「デッサンや音楽や詩作という、長く複雑なプロ
セスを必要とする作業に比べ、ポラロイドの即時性は、私に自由な気持ちを与えます」。彼女の写真作品の本質
は、撮影されるモチーフが、彼女にとって貴重な意味をもっているということにある。無名時代に偶然の出会い
を遂げ、生涯に渡って精神的パートナーであった、写真家ロバート・メイプルソープのスリッパ。その葬儀まで
添った友、作家スーザン・ソンタグの墓石。彼女をアーティストとしての人生へ導いた至高の詩人、神の如くに
憧憬した、アルチュール・ランボーの食器。パティは自らの魂を養ったアーティストの体温を宿したオブジェを、
あるいは被写体が愛着したオブジェを、そのぬくもりを残したまま、彼らへの愛情の証として作品に刻みこむ。