
柔らかな物腰同様、喜多俊之が見据える造形美の世界は様々な『愛』で満ちあふれている。ミラノ市内で開催さ
れた個展会場にて。
喜多俊之が発信する『かろみ』感覚
ジャパン・デザイン総合プロデューサーを務めるデザ
イナー、喜多俊之の個展がミラノ市内で開催されてい
る。『NATURA E TECNOLOGIA.』というテーマのもとに発
表された作品群は、今後、世界の追随が予測されるコ
ンセプチュアルな内容だ。全作品が京都の北山杉材も
しくは和紙を用いた作品群だが、北山杉使用の背景に
は、麿丸太の用途衰退や後継者不足で荒廃の傾向にあ
る北山の杉山保護の願いも込められている。室町期よ
り連綿と続く北山杉の文化と、電気分解によって生産
されるアルミニウム(テクノロジー)を融合させた彼の
手法に、地元欧州の評価も高い。喜多デザインの特徴
はシンプルな中にも遊び心が見いだせる、俳句で言う
ところの『かろみ』感覚。それは彼が標榜する「日本型
ハイテク&ハイセンス」の原泉であり、ミラノサローネ
でも世界の注目を集めた『木』という素材加工のセン
スにおいて日本は一日の長を持つ。